うちのチワワは「常同障害」という病を持っています。イライラしたり不満があるときなど、心が不安定になったときに尻尾を追って回転をしてしまいます。さらに自分の尻尾を噛んで傷をつけてしまうことがあるため、治療が必要です。
常同障害は時間をかけて向き合っていくことになりますし、完治することは難しいと言われている病ですが、治療を始めてから随分と改善されいます。今日は、私がこれまでにどのようなことをしてきたか、ご紹介をしたいと思います。
愛犬が常同障害とわかってから行ったこと
- メンタル専門の獣医師を探した
- フィジカルの検査を行った(血液検査、皮膚検査、レントゲン、MRI)
- エリザベスカラーで尻尾を噛まないように保護する
- 生活サイクルを一定にせず、寝る場所もフリーにしている
治療当初と現在の状態の比較
まずは、治療を続けていることで、どのくらい改善されているか、お話をさせてください。
治療を始めたときは、かなり尻尾に執着していたため、唾液で尻尾の先は細くなっていますし、赤くなっていました。治療を続けてきた今は、尻尾も毛でふわふわになっています。
今でもエリザベスカラーを外すと尻尾をハムっと噛んだりしますが、以前のように自分で怪我をさせるまで強く噛むことはありません。ただ、発作が出て攻撃的になった時に尻尾が噛めるようになってしまうと、怪我をする可能性があるので、エリザベスカラーは常時装着を続けています。
ここに書いている内容は、診断される獣医師により治療内容が異なる場合があります。私の経験をご紹介しているものであって、同じ症状を持つすべての愛犬に該当するものではないことをあらかじめご承知置きください。
自分の尻尾を噛む常同障害については、ぎふ動物行動クリニックのホームページに詳しく書かれています。
尻尾追いが激しいので、動物病院で相談しました
出会ったときは既に1歳を超えていたうちのチワワは、ペットショップでの生活期間が長かったストレスによるものなのか、ショーケースの中でも尻尾を追っていました。購入を検討する顧客にも噛みつきなどの攻撃性があると説明を受けたうえで、納得をしてうちに迎えました。
その翌日、先代犬がお世話になった信頼できる動物病院へ、健康チェックと去勢手術の予約をしに行きました。触診や聴診などで問題がなかったので、約1か月後に去勢手術を行うことになりました。
それから1週間は、チワワはうちに慣れるために気を張っていたのか、尻尾を追う回数も少なかったですし、私たちへの攻撃もなく落ち着いて生活していました。
「安心して生活できる場として、うちを認識してくれたのかな」と思った矢先、チワワが徐々に攻撃性を増してきたのです。
尻尾を追って回る尾追い行動の回数が増え、長時間回り続けるようになりました。そして、尻尾を噛んでしまい血が出てしまったので、慌てて病院に連れて行ったのが、初診から12日後のことです。
散歩に行きたがりません。外に出ても2~3歩だけ歩いて止まってしまいます。車や人など全てのものに恐怖心を抱いている感じがします
そこで、先生から気持ちが和らぐ効果が期待できるサプリメントを勧められてから、数日後に家の周りを1周散歩できるようになりました。ただ、尻尾追いは激しく、尻尾を傷つけては、病院にかけこむ日が続くようになりました。
動物病院に連れて行く私の手や腕も傷だらけになっているのを先生が見て、ゆっくりとした口調でおっしゃいました。
行動についてサポートしてもらえるトレーナーさんを探してみませんか
そこで色々なドッグトレーナーさんのホームページも見てみましたが、検索して見つけたのは、号令やトレーニングを行う「行動療法」という治療法を行う動物病院でした。この尾追い行動の頻度や時間を考えると、これは獣医さんによる診察を受けた方がいいと思ったのです。
フィジカル面とメンタル面で動物病院を分けました
私が見つけたのは、「問題行動カウンセリング」というメニューを行っている動物病院でした。すぐに連絡をしたところ、まずは症状や生活環境を詳しく伝える問診票の記入を行うことになりました。そこで、精神的な問題と疑われる場合は、行動療法と合わせてお薬の治療が行われるというお話でした。
うちに来たばかりで、フィジカル面のデータはありませんでしたが、去勢手術では事前に血液検査があります。そのタイミングで必要な他の検査を追加することになりました。尾追いの常同行動が強くなった病気=「常同障害」が身体的な疾患によるものから発症しているのか原因を探るために、できることを行うことにしたのです。
去勢手術を行う前に、実は先生とはこんなやり取りも行いました。
先方が詳しいデータを把握できる面でも、今後カウンセリングを行う病院で去勢手術をされてはどうでしょうか?
カウンセリングを行う病院は、車で30分の距離がありますので、心のケアのためにお世話になりたいと思っています。今後ワクチンとか下痢になったなどのフィジカルな面では、通いやすい先生のところ(自宅から徒歩5分)でお願いしたいです。
なるほど、それならば当院で行いましょう
徒歩5分なら、仕事から帰ってチワワを病院に連れて行きたいときにも間に合うのです。いつも的確な処置をしてくださる先生なので、あえて病院を変える必要はありませんでした。私の希望通り、フィジカルな面では自宅から近い動物病院、メンタル面としつけについては車で30分の病院というように、動物病院を分けてお世話になることにしました。
検査内容の詳細については、先生同士で連絡を取り合っていただき、血液検査、レントゲン撮影、皮膚検査を行ってから去勢手術を決行しました。
今でも検査したあとやお薬のことについても、連絡を取り合っていただいて情報共有をしていただいています。
行動療法と薬物治療が始まりました
検査結果に異常がみられなかったので、「問題行動カウンセリング」による行動療法と薬物療法による治療が始まりました。カウンセリングには、2週間おきに通っています。行動療法のトレーニングでは、しつけの時に行う「おすわり」や「待て」などもしています。飼い主が号令をかけることによって、尻尾を追った時もその声に気付いてもらうことができるようになるからです。
そして、抗うつ薬や抑制剤などの内服薬による薬物療法も始まりました。
薬を使う治療法は、ドッグトレーナーさんではなく、獣医さんにしかできないことです
できれば、薬による治療はないことに越したことはありません。この選択は、飼い主さんによって考え方の違いがあると思います。私は、お薬を飲むことによってその行動が軽減されることが期待できるのであればと、お薬の力を借りる選択をしました。
今は、毎日1回抗うつ剤を飲ませています。これに加え、精神的に不安定な日が続き、攻撃性が増したり唸りがひどい時、トリミングをしてもらう日は、頓服として抑制剤も飲ませるようにしています。
毎回のカウンセリングでは、「いつ、どんな状況で、どれくらいの時間回ったか、どのようにして止めたか」という記録をつけて報告をすることになっています。
治療を始めた当時は、1枚で12回分が書ける用紙に2週間で3~4枚の記録をしていましたが、今は1行(1回)だけの報告で済む時もあります
カウンセリングとお薬代で1回の費用は、6,000円~10,000円かかっています。
抗うつ薬の量を調整するため、より詳しい身体検査をしました
体重に対して最も少ない量の抗うつ剤を続けてきましたが、3ヶ月経っても状況は変わりませんでした。
先生、薬が効いているとは思えないのですが
薬を増量することはすぐにできます。やみくもに増量を続けるのではなく、より詳しい身体検査をすることによって、今後の治療方針を固めることができます。
本当に身体的な異常がないのか、はっきりとさせてから抗うつ剤を増量した方がいいという先生の考えです。「もしかしたら、こんな病気の可能性も考えられるのに」という不安要素を取り除くために、MRI検査を受けることにしました。
MRIの機械はお世話になっている病院にはないので、紹介をしてもらう形となりました。まずは、カウンセリングの病院で術前検査として、血液検査、レントゲン撮影を行い、翌日に紹介先の病院でMRI検査とレントゲン撮影をしました。
犬種によって費用は変わります。さらに、マイクロチップを装着している愛犬がMRI検査を受ける時には、マイクロチップを除去する費用が別途かかるそうです。
結局はどの検査でも異常が見られませんでした。ここまで身体的な検査をしてみて異常がみられないということで、「精神的なものによる常同障害」ということがはっきりしました。
ここから抗うつ剤の量の調整が始まり、うちのチワワは体重から4段階の設定をすることができました。先生の判断により少しずつ増量をしていき、3段階のところで改善がみられたので、今もそのまま維持しています。
このまま尻尾を追う回数が減り、改善がみられるようになったら、薬の量を減量していき、ゆくゆくは薬なしでの生活ができるまでなっていくことを望んでいます。
抗うつ剤は粉状のものなので、飲ませる時には「ちゅーる」や缶詰に薬を混ぜています。食欲旺盛なので拒否することもなく、毎回ペロっと完食をしてくれます。
「常同障害」を持つ犬の生活環境について
心の不安定から起こる尻尾追いとわかったので、できるだけその原因を引き起こさないように注意すること、発作が起こって尻尾を追ってしまった時のために、常に対策をするように指導を受けています。
現在チワワのために私が行っている生活環境についてご紹介します。
留守番中も基本的にフリーで生活をさせています
移動範囲を狭くしてストレスにならないように、留守番する時や寝る時の居場所はフリーで生活をさせています。
怖がりな猫と同居をしているため、入れないように制限している部屋はいくつかありますが、リビングと廊下、洗面所は自由に行き来できます。トイレは廊下とリビングに設置していて、チワワの気分によってどちらの部屋のトイレも使っています。
狭いところが苦手かというとそうでもないようで、カウンセリングのお教室では、クレートトレーニング(ハウストレーニング)を行っている効果もあって、外出する時には自分から喜んで入ります。
大きめのエリザベスカラーをしているので、チワワの体の大きさに対してクレートは少し大きいものを使用しています。ただ、クレートの空間に余裕があるため、尻尾を追って回ることができてしまいます。
そこで先生から、容易に尻尾を追って回らせないようにするために、クレートの中に毛布やタオルを敷いて、高さを出しましょうとアドバイスをいただいています。
エリザベスカラーの装着を徹底しています
治療を始めた最初の頃は、負担がかからないようにと思い、ソフトタイプのエリザベスカラーをしていましたが、無理やり体をねじって尻尾を噛もうとしていました。
さらに、カラーが汚れた時に交換したくても、マジックテープの音や何をされるかわからない不安からか、私たちに攻撃をするので、おっさんと二人がかりで毎回傷だらけになりながら交換していました。
先生に教えてもらった交換方法は、汚れたエリザベスカラーの外側に新しいエリザベスカラーを装着して、内側のカラーを取るやり方です。
しばらくソフトタイプを使っていましたが、やっぱり尻尾を噛むことができて傷をつけてしまうことが続きました。
尻尾が傷ついてしまうと、その傷を修復させるまでに痛みやかゆみも出てきてしまい、ストレスの原因を増やしてしまうことになるので、先生から指導を受けました。
絶対に尻尾を噛ませないようにするために、固いカラーをすることをおすすめします
そこで、体をねじっても尻尾に口が届かないようするために、色々なエリザベスカラーを試してみました。
尻尾が見えないように大きめのものを使用すること、尻尾が口に届かないように複数のエリザベスカラーを同時装着することにしました
3つのエリザベスカラーをつけたまま散歩や動物病院に行くこともあり、事情を知っている方は「大変ですね」と言ってくれますが、クスクスと笑い声が聞こえる時もありました。
人の目を気にしてうちのチワワの尻尾が傷をつくのであれば、笑われようがしっかりと保護することを徹底するしかありませんでした。
ただ、ベル型のエリザベスカラーは、耳の後ろやアゴの部分がムレるので、私が座っているときに、膝にアゴをこすってきました。
本当は、1日に1回、エリザベスカラーをはずして顔のまわりを拭いてあげることが理想なのですが、手を近づけると攻撃されていたのでそれすらしてあげることもできませんでした。
徐々に改善がみられてきたので、調子がいいときは耳の後ろの風通しを良くするためにも別のタイプのエリザベスカラーも試すようになりました。
最近は、浮き輪タイプのエリザベスカラーとベル型のエリザベスカラーをセットにしてお留守番をしてもらい、帰ったらベル型を取るようにしています。
散歩の時間とコースはランダム、なるべく犬と接しないようにしています
散歩の時間やコースは毎日変えています。決まったルーティーンではなく生活リズムや目的の場所を変えることによって、チワワに刺激が加わるからです。
始めはお散歩が嫌いだったチワワも、今では1時間しっかり歩くこともできています。ただ、他のワンコさんに向かって吠えてしまうことがあるので、できるだけ会わないように基本的には散歩時間のピークを外し、特に夏はかなり時間を遅くして出かけることにしています。
例え仲良くなろうと思っていたとしても、吠えながら近づくのは犬の世界ではマナー違反です。
怖がりな性格も相まって、バイクや車に対しても吠えてしまうことがあります。これは、しつけで修正をしていくことが必要なので、号令をかけてストップ、できたらご褒美というように、おやつを使ったトレーニングをしながら散歩しています。
ドッグランに行くことを禁止されました
犬の常同障害は社会化不足が原因という話も耳にしたことがあります。ペットショップ歴が長く、犬と接することのなかったうちのチワワは、犬との接し方がわからずに吠えてしまったり興奮をしてしまうのだろうと思いました。
ドッグランに行って犬と接する機会を増やすことができれば、改善も見込めるのではないかと思ったのです。
しかし、この考えは誤りで、ドッグランで他のワンコさんが近づいてくれるたびに「近寄らないで」と言わんばかりにグルグル回りました。その姿が怖いようで、他のワンコさんたちはどんどん離れていきました。
結局誰とも仲良くできないどころか、興奮が止まらずに、帰りの車の中でも尻尾追いをしてグルグル回っていました。
尻尾追いの記録に「ドッグランに行って回った」と書くことが多くなったことで、先生から指導が入ります。
この子の場合、ドッグランは効果的ではありません。人間でも、急に人と仲良くするのが難しいと思う大人がいるように、この子も犬と仲良くすることが得意ではないようです。家族との絆を深めることが大切で、犬と仲良くすることは必要ではありません。
思いっきり走らせるためにドッグランに行きたい時は、貸し切りができるドッグランを選びましょうと言われています。
最も大事なのは、飼い主とのコミュニケーション
毎回カウンセリングの時に宿題が出るので、おやつを使いながらトレーニングもしています。
トレーニング中はできたことはしっかりと褒めて、失敗したことは怒らず・目を合わせずスルーします。失敗するとおやつはもらえないので、何か違うということはわかっていて、それに対して怒ることはありません。
チワワに対してではないのですが、私が不満を口にしているときでも、声色に対しても敏感に感じて唸ることがあるので、声の出し方については気を付けるようにしています。
一日の中で楽しい時間も必要なので、ひっぱりっこやおもちゃを投げてもってきて遊ぶ時間も作っています。
この時、興奮度MAXの時間が続かないように、例えばひっぱりっこで興奮して唸り声が出たら、ロープの動きを止めて口から外し、ひと呼吸おいてから再開するというように、興奮度も確認しながら遊んでいます。
気持ちが尻尾に向かないように、散歩したり遊んだりの楽しいことが普通の生活なのだと覚えてもらったり、トレーニングができると美味しいものがもらえるなどの喜びを感じてもらえるようコミュニケーションを取ることは、治療においても重要です。
うちに来た初めの頃は、遊ぶこともわからず、触られることも怖がっていましたがが、今は私に背中を向けて、なでてもらうことやマッサージを要求するまでになりました。
でも、ブラッシングや手足を拭くことを嫌がったり、エリザベスカラーをしている状態でアゴを触られたりするのは嫌いなようなので、嫌がることはしないようにしています。
さいごに
常同障害は、すぐに治るものではなく、根気強さが必要とされます。カウンセリングの先生からも、「1年かけて発症したものは、その倍の時間をかけて治療するくらいの余裕をもちましょう」と言われています。
今でも、「今日も落ち着いているな」「今日も・・・」という日が続いたと思ったら、ある時急に噛みつかれてしまう日もあるので、改善に向けてはまだまだ時間が必要です。
今後の検査は、春になるとフィラリアの予防のために血液採取による抗体検査があります。そのとき、うちのチワワは血液の採取量を多めにして、血液検査を追加し、毎日飲んでいるお薬による影響がないかの確認が必須となっています。
エリザベスカラーを手放すことも今はまだできませんが、たまに短い時間だけ外してみることもあります。
そんな時に、「うちのチワワも普通の犬」だなと思うのです。
病気と向き合うのは、時間も金銭的にも大変なのは事実です。噛まれた日などは、私自身が平穏ではいられないこともあります。
でも、この子がうちにきてくれて本当に良かったと思っていますし、かわいくてたまらない存在です。
だから、私は3つのことを自分と約束しています。
- 諦めない
- 責任を持って飼う
- 色々試して楽しむ
エリザベスカラーやハーネスなど色々なものを試すのも、最近は楽しめるようになりました。私にも気持ちの余裕が出てきた証拠ですね。
エリザベスカラーのない生活を目指して、これからもチワワのことを大切にして、治療を続けていきます。